インタビューツアーの途中ですが
リクエストがありましたので,
タローの学生ビザ取得について時々お話させていただきます.

後から考えますと
確かに私達の考えは甘かった,と反省するしかありません.

あのテロ以来すべてが変わってしまったというのに.
ビザなんて簡単に手に入ると思っていたバカな私達一家でした.
本当に思わぬところでつまづいたものです.

結局2回の申請却下を経て,
ビザ・移民の専門弁護士に助けていただいて
3回目にやっとビザを取得できたのでした.

なんとか9月初旬の入学にギリギリ
間に合わせることはできましたが,
この年の夏は息子のビザのために胃が痛くなる日々でした.

まず知っておいていただきたいのは
アメリカ合衆国の学生ビザに関しては高校留学希望者は
大学留学希望者より厳しい審査がある,ということです.

一番重要なのは
「本人には高校卒業後日本に帰国する強い意志があり,
家族もそれを望んでおり,
またどうしても帰国しなければいけない確固たる理由がある」
ということを完璧に証明することです.

つまり,「まだ若いうちに留学すると日本語もできなくなり,
日本の社会に順応できなくなり,よってアメリカに住み着いて
しまうのではないか?」という大使館側の疑惑を
完全払拭しなければいけない,ということです.

しかし何をどうしたらそれを証明できるのか,
大使館側は全くヒントも与えず冷たく突き放します.
とても一般人の手にはおえません.

今こうして書いていても
無表情な大使館員にあっさり却下されたときの
ショックと悔しさがよみがえります.

追々詳しい経過を書いていきたいと思います.
ジョージスクールのアドミッションオフィサーはわりと若い女性で,
たいへん物静かな話し方をする方でした.
でもタローとの話はそれなりに弾んだようです.

どこの学校でも両親の面接のとき,まずこう聞かれます.
「ご両親は彼の性格をどう評していますか?
かれの強みはどんな点だと思いますか?」

私達は練習した答をにこやかに話します.

「タローの強みは周囲の人に信用される,ということ.
穏やかで誠実,正直,寛大なので周囲の人達に安心感を与え,
たいへん好かれます.
陽気で社交的なのでだれともすぐに友達になれますが,
騒がしい性格とは全く違います.
もう一つは負けず嫌いで努力家ということ.
勉強やスポーツでは積極的で,とても努力します.
また心身ともにたくましく柔軟性があります.」

するとアドミッションオフィサーは「私も本当にそう思いました.
彼のように明るい元気な子を我が校は求めているんですよ!」
と言ってくださいました.感謝.

それにしても,いつもこのセリフを言うときやっぱり
さむ~くなるんですよね・・・

もちろん嘘ではなく,正直に話しているつもりですが,
真顔で自分の子を褒めるなんて,一般的な日本人にはなじめないこと.
自分で言っていて毎回冷や汗が出ました.

やはり長くアメリカに住んでいる日本人の友人達からも
「アメリカ人との会話で相手がすごい子供自慢しても
脱力しないように」とか
「日本的に変にへりくだってはいけない,アメリカ人は真にうけるから.」
と言われていました.

まあ,英語でアメリカ人に話す,
という状況だからなんとか言えるところはありますね.

私個人の感想ですが,アメリカ人だけでなく
韓国の人もかなり「子供自慢」が多いですね.
なにげなく世間話していたはずが,
いつのまにかというより唐突に子供の自慢話に・・・
それもかなりハゲしい自慢,という事がよくありました.
文化の違い,というのを肌で感じられて面白かったです.

しかし子供を誇りに思うのは親なら自然なことだし,
さらっと言う人はあまり「親バカ」って感じはしません.

私は意識しすぎなのかもしれませんね.
結局アンタもブログで息子自慢してるじゃないの,
と指摘されればそうかも,と思います.

さて,物静かなジョージスクールのアドミッションオフィサー
を笑わせた,と得意気なタロー.

「インタビューで担当者を1回は笑わせることを目標にする」
などと例によってくだらないことを言い出しました.

まあ,あまりバカとか下品な印象を与えないように,と一応注意して
次は車で5時間のコネチカット州サフィールドアカデミーへ.


タローのインタビューの後に両親のインタビューとなったわけですが,
ウェストタウンスクールのアドミッションオフィサーは
タローをとてもほめてくれました.

「タローは冗談好きで楽しい子ですね.
短期間の学習ででこれだけ英語ができるのだから,
来年9月から我が校に来ても全く問題ないと思います.」

う,う,うれしい・・・いや,別にそれで合格という
わけではないとわかってはいるのですが.

「でも,もしほかの学校も教えて欲しいというなら紹介しますよ.」
とおっしゃるので,一応学校名だけ教えていただきました.

また,他の学校を受ける予定はあるかと聞かれたので,
正直に全て答えました.
そして,それらの学校についてどう思うか,聞いたところ,
「他の州の学校については実は知らない.」と
これまた正直なお答え.

ともかく,タローはこの学校のアドミッションオフィサーとは
気があったようで,終始明るい雰囲気でした.

それにしても冗談を言って相手を笑わそうとしたり,
茶道について質問されたとき,想定した範囲をこえて
滔々と説明したりしたようで・・・これは意外でした.

親の前では英語を絶対話そうとしないのでわからなかったのですが,
実は親が心配していたより会話できたのですね.

さらに親は「トロいヤツ」と思ってハラハラしていたのに,
けっこう要領がいいというか,大人受けしそうなことを
ちゃんとわかっているんですよね.

そういうわけで次のインタビューからは両親もリラックスして,
石角先生の仰るとおり「好きなようにしゃべってこい!」と
子供を信頼(開き直ることが)できるようになりました.

次はお隣ニュージャージー州のジョージスクールです.


タローは全部で6校を正式に受験しました.

たしか我らが師,石角先生は
「日本のお受験塾のように想定問答集を作って準備するのは
ばかげているし,有害かつ無益」と書いておられました・・・
しかし我が家はそろって
その無益な準備あるいは無駄な抵抗をたっぷりして,いざ出陣.

どこの学校でも意地悪なアドミッションオフィサーなんて
いませんでしたが,相性の良し悪しというのは確かにあったようです.

最初にインタビューを受けたのは,ウェストタウンスクール.
ここはすでに親だけの学校見学をしたところです.

ここでは志願者のうち留学生に対しては二つの面接がありました.
ひとつはアドミッションオフィサーによる通常の面接.
もうひとつは英語担当者による英語能力をみる面接.

担当者はお二人共とても感じの良い女性で,
タローも緊張せず楽しく会話できたそうです.

両親のインタビューもなごやかに進み,最後に夫はこう聞きました.
「タローはこの学校に合っていると思いますか?
あなたのご意見を聞かせて下さい.
そしてもし他に彼に向いていると思われる学校をご存知でしたら
教えていただけませんか?」

こんな質問,日本の学校面接ではありえませんよね.
しかし石角先生は,
「ボーディングスクールの面接は一方的な審査でなく
相互審査の場であり,面接官は教育のプロなのだからぜひ相談すべきだ.
それはむしろ彼らが一番うれしい質問だ.」とおっしゃいます.

というわけでアドミッションオフィサーは決してその場しのぎに
「彼は優秀な子だから我々のコミュニティで十分やっていけます.」
なんて言わず,きちんと誠実に答えてくれる,らしいのです.

もちろん,向いてる,と言われたからといって
合格というわけじゃないですよ.
他にも審査の対象(成績,課外活動,作文)がありますからね.

さてウェストタウンスクールのアドミッションオフィサーの答は・・・
次回につづく.

面接の最後,必ず担当者が「何か他に質問は?」とか聞いてくるので,
学校別にその特徴に関する質問をするよう,用意しました.

質問項目はアメリカの大学,大学院,企業の面接を経験した
家庭教師の皆さん(日本人,アメリカ人)と私で考えました.
素人の手作りですが,非常に有効でしたよ.
結果としては,どこの学校でもほぼ上記の想定内の問答でした.

インタビューツアーの前には家庭教師達とロールプレイしました.
部屋にはいるところから出るところまで.
話し方や発音のチェック.
意地悪な担当者バージョンと感じのいい担当者バージョン.
皆さんノリノリでやってくださいました.

しかしこんなしょうもないことやっているのは日本人だけというか,
ウチだけ?どうなのでしょうか?

石角先生曰く
『面接を終えた子供が「話がはずんで楽しかった」といえば
その学校はその子に合っていると言えるし,
逆に「面白くなかった」等と言えば合っていないのである』

というわけで後は親子共々,明るくはきはき話すだけです.

さらに両親のインタビューもあったんですよね.
実はこれもかなり準備してから臨みました.
息子ががんばっているというのに
両親があまりアホみたいだとかわいそうですからね.

「お宅の教育方針は?なぜボーディングスクール?
どんな教育を我々に期待しますか?」という質問はどこでも出ました.
夫はこれらには非常に流暢に答えられました・・・
もちろん息子の家庭教師に面接担当者役をやってもらって
練習しましたからね.

さて次回は実際のインタビューの様子について.
といっても両親は待機してタロー1人で面接を受けるので,
タローからの又聞き,ということになりますが.

石角先生はおっしゃっいます.

『面接といっても面接担当者との世間話と考えれば良い.
受験生と担当者が一対一で,知的な話題についてどの程度楽しい
世間話ができるかというだけである.
結論からいうと「話が弾む」ということが重要なのである.』

「なんだ,簡単じゃない.」って一瞬思いました.
当時のタローは日本語で,
しかもアホな話なら永久に話が弾みましたから.
あっ,でも英語で知的な話・・・無理だっ!とめまいがしました.

そこで,例え撃沈しようともあまり恥ずかしいことにならないよう,
最低限これだけは答えよう,もし聞かれなくてもこれだけは話そう,
という想定問答集をつくりました.

想定される質問
1. いつアメリカに来たの?
2. 日本にはどれくらい住んでいたの?
3. なぜアメリカに引っ越してきたの?
4. あなたの好きな科目は?
5. アメリカの生活はどう?楽しいことは何?
6. あなたの将来の目標は?
7. まず自己紹介してください.
8. あなたのメンターはだれですか?
9. なぜアメリカで,ボーディングスクールで,勉強したいの?
   何をそれらに期待しているの?
10.好きなスポーツは?どういうレベル?
11.あなたにはどんな才能があるの?
12.余暇は何をしているの?
13.自分をどう定義する?自分の長所短所はどんなところだと思う?
14.家族について話してください.
15.今まで何かリーダー役をしたことありますか?
16.なぜこの学校を受けようと思うの?
17.どんな人と仲良いの?苦手なタイプってどんな人?
18.今の学校での成績,日本での成績はどうだった?
19.あなたはこの学校にどんな貢献ができると思う?
20.今の学校やアメリカでの生活で困ったことはある?
21.今までなにかボランティア活動しましたか?
22.課外活動について話してください.
  (タローの場合,茶道と日本語補習校について話す.)

まだまだ準備は続きます. つづく.
アエラ最新号(5月16日号)にボーディングスクールの話題がでています.
アメリカのエリート教育最前線ということで,
私立校だけでなくエリート公立校や
その中間のようなチャータースクールについても取材しています.

そのなかで私立校の代表として
フィリップス・アカデミー(アンドーバー)があげられています.
この競争率5.8倍の最難関校は
「世界中からもっとも優秀な学生を集める努力をしている」けれども
学力だけではだめで,入試で重視されるのはやはり課外活動,面接,作文.

このブログで息子タローの課外活動について書きましたし,
面接については次回から書く予定です.
作文はこれまた大変で,タローはかなりの時間を費やしましたね.
これについてもいずれくわしく書こうと考えています.

興味深かったのは中高一貫のエリート公立校について.
小学生が選抜試験を受け,合格した子だけが入れますが,
だれでも受けられるわけでなく,出身小学校の校長の推薦が必要なのだとか.
入学プロセスはアンドーバーより学力重視で,
記者が見たところ圧倒的にアジア系が多いらしいです.
ある程度都会の学校(つまり多人種の学校)なら,
オナークラスといえばアジア系がほとんど,
という現象がおこりがちなので「やっぱり」と思いました.

当然,進学状況は良いので,アメリカ市民ならこちらをえらびたくなりますよね.
こちらは授業料無料ですからね.

チャータースクールというのは外国人でもOKなのでしょうか?
それは記事になかったのでわかりませんでした.

さらにアメリカの大学院で「ビザの壁」が皆を苦しめている,
という内容の記事がありますが,高校でもそうなのです.
この件もそのうち書きますが,うちもタローのビザ問題では本当にやられました.
ご時世とはいえ,きつかったです.
私達がアメリカにいたころ,ボストンの補習校のある揉め事が有名になっていました.
アメリカで生まれ育って日本語があまりできない幼児の受け入れを,学校側が拒否したとか.   
その父親である日本人が抗議して,何か日本の雑誌か本にも取り上げられましたが,
結局学校は断固として入学を認めなかったと私は記憶しています.
   
補習校側が拒否する理由もわからなくもありません.
なぜならどこの補習校も予算・教員・教室不足でぎりぎりの運営をしているからです.   
特に幼児クラスでは少なくとも日本語を「聞ける」という前提でやっているので,
日本語のできない子が入ると混乱は必定です.   
ただでさえぎりぎりのスタッフでやっているのに,
誰がその子のケアをするの?ということになります.   

タローの補習校でも低年齢のクラスほど希望者が多かったので,
面接をした上で少なくとも「日本語の指示を理解できる子」を優先させていました.   
先生の指示が理解できないと危険なこともありますから,しかたないと思います.
   
それにしてもボストンの補習校は何かときちんとしているので有名でした.   
教育熱心な保護者が多く,日本に帰国してからも子供が困らないように
きちんとした授業や多くの宿題を望む方が多い,ということです.   
また私も実際にあることを依頼したことがあるのですが,きっぱり断られ,
その断りの書面からも厳格さを感じました.   

それに比べて,といってはナンですがタローの補習校は規模が小さいだけに柔軟性があり,保護者も肩の力が抜けている方が多かったようです.   
   
ボーディングスクールへ提出する成績表や推薦状は,校長先生が快く引き受けて
きちんと用意してくださいました.

次回はいよいよ本番,息子のインタビューツアー・・・その事前準備について.
インタビューで5割方決まる,といわれるので,ぶっつけ本番!する気にはなれず,家庭教師達とシュミレーションなどをしました.







タローが通った補習校は幼稚園から高校まで230人前後の生徒がいました.  
例えばボストンの補習校に比べるとかなり小規模です.   
それでも生徒の希望や日本語能力によっていろいろなクラスがありました.   

日本の検定教科書を使うクラス(通称文部省クラス)・・・一応日本の学校と同様の授業をするので,日本語を母国語とする子や日本から来たばかりの子じゃないとついていけません.国語,数学,社会が必修でした.   
現在は選択制になって,好きな科目やレベルが選べる,ということです.

日本語クラス・・・ここの生徒は,例えばアメリカで育って英語が第一言語になり,「文部省クラス」にはついていけない日本人家庭の子.   
あるいは配偶者が日本人,単に日本に興味がある,日本の漫画を読みたい,など様々な動機を持つアメリカ人や外国人.   
だから子供だけでなく大人もいたし,けっこう細かくレベル分けされていたと思います.   

文部省クラスは宿題が大変ですが,タローにとって補習校は楽しいところです.思い切り日本語で友達と話し,授業でも普通に発言できるんですから.   
また,小さいながらも図書館があり,フル活用させてもらいました.   
外国の田舎にいると日本語の本は贅沢品です.   ニューヨークと違ってブックオフもありませんし.   

人数が少ないぶん,家庭的な雰囲気で楽しかったのですが,保護者全員が役員など学校のお手伝いする機会が多く,いろいろな仕事が割り当てられました.
運動会,学芸会,バザーなど一通りの行事のときは,特に忙しい.
でも日本の学校では考えられないくらい多くのお父さんが積極的に学校の運営に関わっていました.

我が家にとって一番の収穫は,家族ぐるみでつきあえるお友達がたくさんできたことでした.   

次回は補習校の運営の難しさ,についてお話します.


タローは普通に地元のミドルスクールに通いつつ,週末は日本語補習校で日本の中学校と同じ教科書を使った授業を受けていました.   それは課外活動としてはかなりポイントが高かったのではないかと勝手に推察しています.
   
もちろんボーディングスクールの受験において,それをウリにするつもりなら,どちらの成績も軽んじるわけにいきませんから,両方の学校からの宿題をこなすのに大変な思いもしました.   
しかし実は当初は補習校に通わせることも考えていなかったのです.   
『送迎がめんどうだし,本人にも負担がかかりすぎる.もし本当にボーディングスクールに行くなら英語の勉強が第一だから,日本の勉強は家でやらせておくだけで十分』なんて考えていたのです.
   これはとんでもない考え違いでした.   
今は本当に行って良かったと,勧めてくださった方に感謝しています.   
それは単に課外活動として使えた,というだけでなく,タローの日本語能力を維持向上させるために不可欠であったと思うからです.   
なにしろ渡米当時まだ12才.そこで英語オンリーにしてしまったら,義務教育修了程度の漢字も覚えきれない状態になるわけですから.   
素人(親)の教育は自宅でやっても限界があり,やはり例え週一回の補習校でも『学校へ通う』ということのすごさを実感しました.   
海外の多くの日本人家庭では,子供を日本人学校(全日制)あるいは補習校
(週末のみ)に入れます.   
現地の学校だけ,という方針の家庭ももちろんあります.しかし以前にも書いたと思いますが,多くの日本人が我が子に日本語を忘れてほしくない,と考えているようです.   
それは短期の赴任で帰国する方も,現地に永住する予定の方も関係なく個々の家庭の好みというか,方針によります.   
ただ,全日制の日本人学校がある地域はアメリカでも限られていまして,アメリカ在住の日本人はかなり補習校に通っているのではないかと思います.
つまり,平日は現地の学校で現地の言語にさらされ,週末だけ日本人学校,というパターンです.   でも行かないよりずっとずっとましです.   
両方の学校からの宿題がきついとか,週末は現地校の部活やイベントがあるとか,いろいろな理由で辞めていった子がいますが,その多くは坂を転げ落ちるように日本語能力が落ちます.   日頃日本語を使っていなくても,週一回日本語補習校に行くだけで全然違うのです.   短期滞在の場合は子供のほうも帰国してからのことを考えてなんとか続けますが,長期や永住予定の家庭では子供が脱落しがちです.   辞める辞めないの親子喧嘩はよくあるようです.   
しかしタローの行った補習校は本人も気に入っていたし,親にとっても大変おもしろいところでした.   つづく.